帰還者の魔法は特別です【２６２話】ネタバレ

ディバイドに潜⼊することに成功したが、彼らが迎えられたものについてデジールは深い熟考に陥る。

（なぜ私たちが旅している道に沿って、これほど多くの兵⼠が駐留しているのですか？）

このルートの安全性は緩いと予想していたが、この信念に反して、ディバイドは攻撃を予期する何らかの理由があるかのように徹底的に準備していた。

⾶⾏船の進路に沿って軍隊を待機していただけでなく、対空魔法使いを動員していた。

ヴァルキリーがステルスモードを持っていなかったら、デジールの計画は混乱していたでしょう。

「彼らは私たちの動きを知っていた」

スパイ。

その可能性は非常に低いでしょう。

作戦に参加した全員が最後のブリーフィングまで暗闇に晒されていたため、それまで情報が漏洩することはないはずだ。

「・・・アーティファクト？」

スカルマスクは、理に叶った⼒を持つアーティファクトを多く所有している。

これが最も可能性の⾼い推論。

アーティファクトの有無にかかわらず、ヴァルキリーの動きが露呈していたことは明らかだ。

デジールは振り返り、プリシラとドナペに話しかけた。

「これまでは順調に航海してきましたが、これからはこれほど簡単にはいきません」

プリシラの表情が強ばる。

「じゃあ・・・」

「計画の第２段階に進む時が来ました」

これまではステルスシステムにより敵との接触をすべて回避することができた。

しかし、それが無効にされた後、彼らは敵のラインの後ろで全⾯的な戦いに従事するしかないでしょう。

彼らの⽬標は、敵の背後にあり、連合軍の本格的な攻撃がディバイドの動きを制限している間に、影の世界の作成に関与する塔をすばやく破壊すること。

ディバイドに建てられた塔の総数は４７。

そのうちの１つを破壊したので、まだ４６の塔が残っている。

しかし、デジールはあまり落ち込んでいるように見えない。

「そのうちの４つを壊せば、塔は影の世界を作成する能⼒を失います。それを学
ばなかったら、この操作は不可能だったでしょう」

（彼がいなければ、この操作を実⾏することはできなかった・・・）

誰かから⼊⼿した情報のおかげで、デジールたちはディバイドのどこに塔が建設されたかを把握することができた。

ディバイド内に設置された４７の塔は、中央の電源に依存している。

そのソースが壊れた場合、すべてのタワーを破壊することなく、すべての⼈⼯影の世界の作成を停⽌することが可能だ。

第⼆に、その電源は影の世界内に隠されている。

なんらかの⽅法で、スカルマスクはピッツバーグに隠された影の世界内に電源を隠したのだ。

電源を破壊するには、その影の世界をクリアする必要が。

第三に、４７のタワーのうち４つは、電源がアクティブな間、影の世界を維持する上で重要な役割を果たしていた。

ほんの数分前にデジールが破壊した塔２は、それら４つの塔の１つ。

状況を迅速に解消するためには、これら３つの塔を同時に攻撃する必要がある。

デジールはこの仕事のためにドナペ、プリシラ、ジョードを選んだのだ。

ドナペ・アスランと北の戦⼠たちはピッツバーグの北⻄にある塔を破壊し、プリシラ・ハイシルカイトは聖騎士を南の塔に導き、ジョード・エグザリオンは魔塔の魔術師と⼀緒に東の塔を破壊する。

その間に、デジールが率いる本体はピッツバーグに向かい、電源を保持していた塔を破壊する。

「移動する時が来ました。最初に⾏きます」

ドナペが元気に笑う。

「デジール・アルマン、これを事前に宣⾔します。今回はあなたのパフォーマンスについていくつもりです」

「この戦争で怪我をしないことを願っています」

「私は⾃分のベストを尽くすだけだ」

ドナペに続いて、プリシラはデジールの幸運を願って去っていく。

⼀⼈になったデジールは、複雑な視線で自身の指を⾒つめる。

⻘いリングが光輝いていた。

S級アーティファクト、テセラセクト。

５つの呪⽂を保存し、使用者が通常の呪⽂のように即座にそれらを唱えることを可能にする最⾼のアーティファクト。

それはクロウマスク、イカルス・キーゴが所有していたアーティファクト。

鮮やかな⻘い光を⾒て、デジールは５か⽉前にこの情報を⼊⼿した⽇を思い出す。

魔塔の地下室。

ホムンクルスを拘束して研究するための研究スペースであった場所の中に、鎖で縛られた男がいた。

装備は男の周りに配置され、さまざまなワイヤーやデバイスが取り付けられている。

彼らの⽬的は、ターゲットのマナを際限なく吸収すること。

イカロス・キーゴ。

かつて⾰命家として知られていた⼈物で、アウターの幹部としてカラスの仮⾯をかぶったまま、⼤陸全体で数々のテロ事件を起こした犯罪者。

現代の２番⽬の第７級魔術師であるイカロスはひざまずいていた。

デジールは冷たい表情で彼を見下ろす。

「・・・殺しにきたのですか？」

「あなたが死ぬ前に、あなたが知っている全てを話す必要があります」

「私が素直に教えるとでも？」

「あなたが世界を平等な場所にすることを本当に信じていたなら、あなたが⾃分の信念を本当に信じていたなら」

「・・・どういうことだ？」

混乱したイカロスの前で、デジールはコミュニケーションパッドを見せる。

コミュニケーションパッドには、⻘い点で覆われた地図が。

しばらく地図を⾒ていたイカロスは、デジールが⼀⾔も⾔わなかったにもかかわらず、この地図から情報を推測した。

「影の世界を作成するために、ディバイドの周りに建てられた塔はありましたか？」

「はい。これが続けば、⼈類はスカルマスクによって破壊されます。私たちが⽣き残らなければ、あなたの理想を実現することは不可能です。そのためには、さらに情報が必要です」

「・・・」

「⼤陸のすべての国が、⼀つの⽬的のために団結しました」

強⼒な国と弱い国。

北部の⼈々と⼤陸の⼈々。

敵と味⽅。

⼤陸全体を脅かす⼤災害が発⽣したとき、⼈類は⼀つに団結し、それらの間に⽴っていたすべてのものを⼀時的に捨てた。

その光景を通して、イカロスはほんの⼀瞬、彼が追求した理想のいくつかの実現を、多⼤な費⽤をかけてほとんど成功せずに垣間⾒る。

貴族と庶⺠の団結。

誰もが差別なく幸せになれるユートピアを。

「・・・誰が正しかったかは明らかですね」

沈黙は永遠のように感じられるものに向かって伸びていく。

イカロスは頭を上げる前にもう⼀度地図を⾒下ろした。

「・・・あなたを助けるかもしれない１つの情報を持っています」

しばらくして、彼はついに口を開く。

「ディバイドに組み込まれている塔には、独⾃の電源がありません。代わりに、ピッツバーグ宮殿内にすべての塔に電⼒を供給する施設があります。私はそれを「電源」と呼んだ」

その瞬間、デジールは何かを思い出す。

スワン・カテリーナを救出するための作戦の最中に、彼は王宮の障壁を通り抜けていたとき、宮殿の下に⼤量のマナの流れを感じた。

「あなたが感じたのは、その電源でしょう。それを壊せば、他の塔は機能しなくなります。しかし、そうすることはほとんど不可能です」

イカロスは４つの塔を指摘する。

「これらの４つの塔は、他の塔とは少し異なって建設されました。当時はその理由がわかりませんでしたが、今ではその⽬的にかなり⾃信があります。これらの４つは、ピッツバーグ宮殿の下の電源を守る責任があるのでしょう」

それがイカロスがデジールに与えた重要な情報。

「本当に私を信じますか？私があなたを騙している可能性は？」

「え？ああ、それは必要ないでしょう」

デジールは、イカロスが彼の信念のために何かをした⼈であることをよく知っていた。

⾔い換えれば、それは、デジールが彼の信念に⼀致する道を歩いている限り、イカロスは嘘をつく理由がなかったことを意味している。

「じゃあ」

「デジール・アルマン」

デジールが振り返ると、イカロスは傷ついた顔でニヤニヤ笑いを浮かべていた。

それは古くからの友⼈に向けて抱く笑顔。

「私はあなたが成功することを願っています」

これが⾰命家の最後の意志となった。