帰還者の魔法は特別です【２３４話】ネタバレ

⼤評議会は順調に進んだ。

各国の利益に応じて、すでに多くの項⽬が議論されている。

会議の進⾏役を務めていたディバイド王は、有能に評議会を率いていた。

議論が遅くなり、特定の議題で⾏き詰まったとき、彼は各当事者に合理的な妥協案を提案する。

彼の独特のカリスマ性でどんな騒動も落ち着かせていたのだ。

「彼がアウターと協⼒しているなんて信じられない・・・」

それは、これまでの会議の期間中、ディバイド王を⾒た後のプリシラのコメント。

「私は過去の評議会で彼に数回会っただけですが、彼が当時と現在の⾏動に違いは⾒られません。彼はいつもと同じように見えます」

ディバイド王に変化は見られない。

ジョードは困惑した表情で呟く。

「彼がアウターと⼀緒にいたとしても、彼はあのような明⽩な⽅法で⾏動する必要はなかったはず」

デジールは⼼から同意した。

アウターの観点からすれば、クローラがアウターとの繋がりを明らかにする必要はなかった。

それは全く不必要なリスクなのだから。

「それにもかかわらず、彼は行動しました・・・。おそらく彼らは、彼らの勝利に⾃信がありるのではないでしょうか？」

デジールは王の⼝調と明⽩な脅威を思い出した。

彼の傲慢さは、まるでデジールたちが既に彼の⼿のひらの上で踊っていたかのよう。

彼の⼝調には、いつでもそれらを破壊できるという優越感が見られた。

「しかし、彼らはどのような計画で勝利を確実にする気だ・・・？」

彼らがどのように行動するのか予測できない。

しかし、明らかな事実が一つ。

「アウターが彼らの勝利に本当に⾃信を持っているなら、それは彼らが私たちを追い払う計画を持っていることを意味します。おそらく、私たちがここディバイドにいる間に起こるでしょう」

「次の議題は、ディバイド王国が最近直⾯した問題を提起したいと思います。ヘブリオン帝国が最近、被害者のふりをして私たちに莫⼤な補償を要求したことを皆さんはご存知だと思います」

クロラは続けた。

「彼らの証拠は明確でないにもかかわらず、彼らは私たちが帝国での反乱を⽀持したと結論付けました。この⾏為は、他の暴⼒⾏為と何ら変わりはありません。帝国が私たちよりも強⼒であるという理由だけで、彼らは私たちの⼩さな王国にひどい暴⼒を振るったのです。私たちの王国は、最悪の結果である戦争を防ぐという帝国の申し出をしぶしぶ受け⼊れました。しかし、このようなことが⼆度と起きてはいけません。帝国が⻄王国連合の他の王国に適合すると思われる要求を無慈悲に強制することを抑制するために、私は⻄王国連合に、原因が正当であると考えられるときに軍事的に報復するために団結することを提案したいと思います」

彼の発言に、⼤評議会は数分間動揺する。

ディバイド王国とヘブリオン帝国の確執は有名だ。

実のところ、⻄王国連合が最初に設⽴されて以来存在していた反帝国のイデオロギーは、ディバイド王国の影響を強く受けていた。

ディバイド王国は、事実上⻄王国連合の議⻑国。

「ディバイド王国が経験したこの事件は⾮常に悲しいです。しかし私の意⾒は、クロラ
王のそれと少し異なります」

声を上げたのはプリレチャ帝国の王、グリード。

「クロラ王、ディバイド王国がヘブリオン帝国の反乱軍と交易したのは軍需品だと聞きました」

「・・・その通りです。どの商⼈協会がどの⽀配者と取引するかを禁⽌することはできませんから」

グリードはクロラの激しい睨みに対して、少しだけ動揺する。

しかし、彼は後退せず、彼の信念を共有し続けた。

「も、もちろんです。しかし、帝国の観点から見れば、ディバイド王国が軍需品の取引を通じて反乱を⽀持したかのように⾒ることができました。ディバイド王国は、起こりうる誤解を認識できなかった責任があると思います」

プリレチャ王国が意見を出すとは誰も想像できなかった。

グリードが話し終えた後、彼⾃⾝に同情的な強い意⾒が評議会の部屋を満たし始める。

一年前だったとしたら、彼ら全員がこの問題についてディバイド王国を⽀持していたでしょう。

当時、反帝国のイデオロギーはかなりの重みを持っていたのだから。

しかしデジールの努⼒により、帝国と⻄王国連合の関係は劇的に変化した。

その結果、⻄王国連合は帝国と親密になるという明確な可能性を⾒ることさえ出来たのだから。

「理解しました」

クロラ王は部屋の雰囲気と、⻄王国連合の感情を読んだようだ。

「そうですね。ここで何が起こっているのか私は理解しています」

彼は、部屋を⾒回して微笑む。

（何を理解した・・・？）

まるで時計がカウントダウンし始めたかのように、デジールは何かが変わったことに気づく。

彼が⽴ち上がろうとしていたちょうどその時、誰もが震えを感じることができた。

槍の終わりが壊れ、ジークフリートは地⾯に投げつけらた。

彼の⽩い銀の鎧は完全に破壊されている。

床は彼の⾎で滑らかに。

ジークフリートはカテリーナをぼんやりと⾒つめていた。

「あなたは本当にそのような些細な能力で私に勝てると思っていたのですか？」

彼女は彼を嘲笑するが、ジークフリートは何も言えず、彼はカテリーナを睨みつけるだけ。

この場所に、誇りに満ちた⾼尚な騎⼠はいない。

カテリーナはジークフリートの⾸にそっと指を置く。

「私はあなたに警告したはずです。私に会わなかったふりをした方がいいと」

⾸を折るのに⼗分な圧⼒をかけることで、哀れなジークフリートを終わらせた。

スワン・カテリーナの⼒は圧倒的だった。

塔に⼊ってきた飛龍師団の全員が殺され、サイドガードの２⼈だけが引き換えに死んだ。

しかし、彼らは⾃分たちが勝ったとは思っていない。

「まもなく、ディバイド王国の完全な軍事⼒がここに殺到するでしょう。残り５分未満です」

「ええ。今すぐ撤退したほうがいいでしょう」

カテリーナは塔の周囲を観察する。

できるだけ早く状況をコントロールするために、彼⼥は全⼒を尽くした。

彼⼥の強⼤なオーラが塔を⼀掃した後、この塔の中には破⽚しか残っていない。

「しかし、これは奇妙です・・・」

カテリーナの馬鹿げたオーラに⾒舞われた後、柱と外壁はまだ無傷だったが、他には何もない。

「キメラの製造が単なるフェイクだとしたら？」

「え？」

サイドガードはそのような突然の質問に唖然とする。

カテリーナの⽬は無傷の壁をなぞった。

実験室も含めてすべてが⼤破したが、１階は完全に無傷のまま。

地下室。

「・・・」

カテリーナの強⼒なオーラがすべてを襲ったが、床は無傷のままだった。

表⾯が強いからだけではない。

彼⼥のオーラを⽌めた⼒がカテリーナの反対側に⽴っていた。

「・・・あなたは」

彼⼥の前にはアウターの幹部の⼀⼈が。

クロウマスク。

「お久しぶりですね、スワン・カテリーナ」

「・・・はい、久しぶりです。⾰命以来初めてでしょうか？」

カテリーナの顔には緊張が。

「最初から⾒ていたのですか？」

「・・・」

「あなたが今⾃分⾃⾝を暴露する唯⼀の理由は、あなたが暴露する余裕がない何かが私の下にあるからですね」

「あなたはいつもとても⾯倒な存在です。キメラについて知った後、あなたは去るべきでした」

「お褒めの⾔葉をありがとうございます」

彼⼥が推測した通り、キメラはただの囮だった。

通信装置を操作したかったが、接続できない。

「残念ながら、ここでは通信魔法を操作することはできません」

「うーん・・・。それは、かなり⾯⽩い秘密ですね」

この塔の本当の⽬的は？

キメラの⽣産は、どんな犠牲を払っても隠すに値する秘密のはず。

「ここを出ると、通信装置を使⽤できるようになります」

カテリーナがオーラを集めると、⻘みがかった⽮が彼⼥の周りに形成され始めた。

「⼼配しないでください。私はあなたを殺し、地下室にあるものを⾒つけて、みんなに必ず知らせますから」