こんにちは、ツバサです。
【結婚商売】を紹介させていただきます。
今回は60話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

贅沢な悪妻、ビアンカ・ド・アルノー。
人々に見捨てられ死にかけていたその時、ビアンカは奇跡的に18歳に回帰する。
絶縁したも同然の実家、アルノー伯爵令の人々も私を嫌っている。
孤立した私の立場を見つけるには、後継者が必要だ…。
「あなたの子供を産む準備ができました」
「…その話はあとにしよう」
「私たちの結婚はいくらだったでしょうか。 その代をすると言っているのです」
夫の子供を産まなければ。夫を誘惑してでも、説得してでも。
ビアンカ・ド・アルノー:主人公
ザカリー・ド・アルノー:ビアンカの夫。
イボンヌ:ビアンカの専属使用人。
ソヴール:ザカリーの側近。
ロベル:ザカリーの側近。
ガスパル:ザカリーの側近

60話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 未来を変えるために
「私が支えよう」
イボンヌが答える前に、横になっていたザカリーが体を起こして答えた。
慌てたビアンカが言葉を躊躇っている間に、イボンヌは邪魔にならないように、しかし礼儀を忘れない態度で頭を下げて部屋を退出する。
ビアンカが途方に暮れて戦々恐々としている間に、ザカリーがベッドから出てきた。
戦場で焼けた彼のしっかりとした肌が朝日を浴びて輝いている。
昨夜は慣れたと思ったが、明るい日差しの下で堂々と見られるほどではなかった。
見るに忍びなかったビアンカが首を背けた瞬間、ザカリーがビアンカの体をさっと抱きかかえる。
ザカリーは慎重にビアンカを浴槽に下ろした。
彼女のつま先に触れた水の温かい感覚が全身に広がっていく。
バラ油を落とした浴槽の水からは、ほのかなバラの香りがし、バラもふわふわと浮かんでいた。
バラの香りが鼻先に染み込み、肌に広がる暖かい感覚がビアンカの体をほぐしてくれた。
ザカリーはベッドに腰掛けてビアンカが洗う姿を見守る。
彼女はぎこちなく体に水をかけ、ザカリーの方をチラッと見た。
自分を見つめる黒い瞳。
まるで何か願うことがあるような・・・。
結局、我慢できなかったビアンカが尋ねる。
「旦那様も一緒に洗いますか?」
言っておきながら、ビアンカは一瞬で後悔した。
一緒に洗うなんて、すごく破廉恥に聞こえたからだ。
しかし、ビアンカは言葉を撤回する代わりに、アゴの先を高慢に持ち上げた。
こんな提案をすることもできるのよ。
私たちはもう・・・、本当に夫婦なのだから。
表向きは平気なふりしても落ち着かないビアンカの内心に気づいたのだろうか。
ザカリーはニッコリと笑いながら答えた。
「そうしていては今夜の宴会に出席できないと思う」
その言葉が与える濃艶な雰囲気に、ビアンカは思わず震えてしまう。
ザカリーは床に適当に落ちていた服を身に纏った。
彼が服を着ようと動くたびに筋肉が揺れ動く。
昨夜、自分の上で乱暴に動いていた姿が浮かんできた。
顔が熱くなったビアンカは、水気の多い手で顔を撫で下ろす。
服を着たザカリーがビアンカに近づき、あごの先を手で軽く持ち上げた。
彼の乱れて髪と胸の結び目は固く結ばれている。
いつも感じられる禁欲と端正さの代わりに、妙に退廃的な魅力が漂っていた。
ビアンカがぼんやりと眺めている間に、ザカリーの顔が近づいてくる。
彼はビアンカの水っぽい頬に軽くキスをしながら囁いた。
「後で会いましょう。迎えに来ます」
ザカリーが部屋を出るや否や、ビアンカの体を包んでいた緊張感が一気に解けた。
彼女は浴槽に首の後ろをもたれかかり、深くため息をつく。
その姿は、新しい花嫁の満足感とは程遠いものだ。
間もなくイボンヌが入ってきた。
彼女の顔は好奇心で満ちている。
普通、ロマンチックな物語は人々の好奇心をそそるものだ。
聞きたいことが多かったイボンヌの口がむずむずしている。
けれど、ビアンカの顔に満ちた想念に、彼女はどうしても聞くことができなかった。
ビアンカがソワソワするのも理解できる。
それもそのはずで、結婚して9年ぶりの初夜なのだから。
イボンヌは口を閉じて、何も聞かずにビアンカの世話を始めた。
ビアンカが不幸かというと、そうではない。彼女は今、この上なく幸せだった。
恋をする相手との優しくて激情的な情事。
それに、愛する相手は誰でもない彼女の夫なのだから。
ただ、その幸せの大きさだけ未来に落ちてくる絶望との格差が大きいことを恐れているだけなのだ。
昨夜、離れていた距離が一気に縮まった。
しかし、心は依然として遠くでグルグル回ったまま。
ザカリーが何を考えているのか知ることができたなら、もう少しはマシなのかもしれない。
けれど、ビアンカはザカリーの本心が何かを尋ねる勇気がなかった。
ここで勇気を出さなければならないことは分かっているが、その気になれないのだ。
心の中が揺れる。
もう彼の一言、手振り一つに一喜一憂することになるだろう・・・。
今の関係で満足できず、ザカリーの愛を渇望するようになり、彼が戦争に出れば寂しさにうんざりするだろうし、彼の視線が他の所を向くと湧き立つ嫉妬で身を焦がすだろう。
フェルナンに取り憑かれた自分がどれほど対策をしていなかったを考えると、本当に惨稽たる思いだ。
おそらく自分は同じことを繰り返すだろう。
人間は簡単に変わるものではないから。
そして繰り返すことを知りながらも仕方ないのだろう。
変わろうともがいても、そのまま自分に気づいて絶望するのだから。
それでもザカリーが責任感のある男だということが不幸中の幸いだ。
彼が言った通り、彼には自分しかいないだろう。
その事実が与える安堵感は凄かった。
けれど、その安堵感はただビアンカが目を閉じてそっぽを向いた結果に過ぎない。
自分に迫る未来。
決定的に彼女が絶望せざるを得ない理由。
他でもないザカリーの死・・・。
考えるだけでも胸が締め付けられる感じで息が詰まった。
そうだ。
ザカリーの本心、あるいは自らの嫉妬などを悩んでいる場合ではない。
ビアンカは拳を握りしめる。
彼を死なせてはいけない。
彼を助けなければならなかった。
ザカリーがビアンカを愛していようがなかろうが、彼女が彼を愛しているのだから。
その瞬間、稲妻のようにビアンカの脳裏をかすめて過ぎ去った考えが。
(もしかしたら私が回帰した理由は、まさにこのためなのかもしれない)
回帰した後、ビアンカは一度も一体なぜ自分が回帰したのか疑問に思ったことがなかった。
ただ神様が自分を哀れに思ってチャンスを与えたと思っただけ・・・。
しかし、よりにもよって自分が?
ひょっとしてビアンカでなければならない理由があるのだろうか?
彼女が戻ってきてから最も大きく変わったことは、ザカリーに関することだった。
一言もまともに話したことのない過去と比べると、嘘のようにひっくり返った現実。
「私が回帰したのは・・・。ザカリーを生かすために・・・」
推測ではあるが、もっともらしい。
明快な答えというにはまだ釈然としない点は多いが・・・。
しかし、自分には出来ることがなかった。
ドレスを選んで、家の中を飾って・・・。
こんなことで、どうやってザカリーを救えるのだろうか?
頭が複雑になったビアンカは、肩が沈むまで水の中に身を浸す。
風呂の上に浮かんでいるバラが彼女の頬を掠めて通り過ぎていく。
それでも何か方法があるはず。
ザカリーとの関係も変わり、父親との誤解も解けた。
それなら、ザカリーの死も避けられるだろう。
心の中で涙を飲み込んだビアンカは、未来を変えるために目を輝かせた。




