こんにちは、ツバサです。
【結婚商売】を紹介させていただきます。
今回は52話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

贅沢な悪妻、ビアンカ・ド・アルノー。
人々に見捨てられ死にかけていたその時、ビアンカは奇跡的に18歳に回帰する。
絶縁したも同然の実家、アルノー伯爵令の人々も私を嫌っている。
孤立した私の立場を見つけるには、後継者が必要だ…。
「あなたの子供を産む準備ができました」
「…その話はあとにしよう」
「私たちの結婚はいくらだったでしょうか。 その代をすると言っているのです」
夫の子供を産まなければ。夫を誘惑してでも、説得してでも。
ビアンカ・ド・アルノー:主人公
ザカリー・ド・アルノー:ビアンカの夫。
イボンヌ:ビアンカの専属使用人。
ソヴール:ザカリーの側近。
ロベル:ザカリーの側近。
ガスパル:ザカリーの側近

52話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- あなたが望むなら
ビアンカの心臓が激しく鼓動する。
周りの歓声のおかげで、自分の心臓の音が聞こえないか心配しなくてよかったと思えるくらいに心臓の音が大きい。
まるで何かを叫びながら主張するように・・・。
ビアンカは今まで知らないふりをしようと努力していた。
私は彼を愛してるのではない。
ただ情が湧いただけだと・・・。
事実を悟っても辛いだけなのだから。
しかし、全部嘘だった。
輝かしい栄光が彼女を映した瞬間、ビアンカは自分の心を偽っていたという事実を認める。
結局、その事実は彼女の心臓を痛めたのだから。
私は彼を死なせることはできない。
私は彼を愛しているから・・・。
そう、私は彼を愛している。
ビアンカはザカリーが自分を愛していると生半可に確信することを恐れたが、いざ自分自身の心はまともに落ち着かなかった。
彼を信じてはいけない。
彼に裏切られる苦痛がどうなるか見当をつけろ。
だが、早見して遠ざけていたのが滑稽にも、彼女自らが心のかんぬきを解いてしまったのだ。
ザカリーが好きだということに気づいてから、今まで彼の前でどうしてあんなに平然と立っていられたのか全部忘れてしまった。
緊張でビアンカの口の中がカラカラに乾く。
ビアンカの心の中で洪水のように燃え上がる感情の流れに全く気づかなかったザカリーは、馬の手綱を弄りながら呟く。
「全てあなたのおかげです。ありがとう」
「・・・本当にありがとうと思っているなら、感謝のキスでもしてみたらどうですか?」
重ねて感謝の意を表すザカリーの姿に、照れたビアンカが澄ました声を出す。
その一方で、目を合わせる勇気がなかったので、首は背けていた。
キスをしてと言ったが、ビアンカとしてはそれは普通の言葉に過ぎない。
後継者を持たせてほしいということに他ならないが、ザカリーが本当にキスをしてくれるとは期待もしていなかった。
寝床さえ拒む男が人前でキス?
キスしてほしいと言われてする男なら、すぐに口づけをするはずだ。
そのように期待なしに吐き出した言葉ではあるが、感情を自覚した後だからか、普段とは違ってビアンカの顔は熱くなった。
前世でザカリーとキスをしたのがいつだったのか記憶も、感触も薄れている。
その時、ザカリーが手を伸ばしてビアンカの頬を抱きしめた。
柔らかな頬に触れる荒っぽい感触。
革と鉄の匂いが彼女の鼻を刺した。
突然の接触に戸惑ったビアンカが何かを話そうとする前に、ザカリーが先に口を開く。
「あなたが望むなら」
「・・・え?」
そう言うや否や壇上の欄干を挟んで、馬の上にいたザカリーの体がビアンカに向かって傾く。
慌てたビアンカが後退りしようとしたが、ザカリーの手が彼女の後頭部を固定していた。
どれだけ力を入れているのか、ビアンカは身動きもできない。
「ちょっと待っ___、んん・・・」
「ちょっと待って」と言おうとした言葉は、そのままザカリーの唇に飲み込まれて消えた。
ビアンカは目を見開いたまま今の状況を認知しようと努力するが、どれだけ頭を回しても理解できないのは変わらない。
一体何が今まで堅固に鉄壁を張っていた彼の考えを変えたというのか。
ザカリーの口づけは、まるで本人のようだった。
無愛想で、言葉より行動が優先で、淀みなく・・・、妙な部分で繊細な。
水でもかけられたように場内が静かになる。
しかし、ビアンカはそのようなことに気を遣う余裕がなかった。
何度も落ちてまた触れてくる唇は、試合の熱気が残っているように熱かった。
舌が絡まって放そうとしないように、彼の固い舌からは執拗な執着さえ感じられる。
ビアンカは理性的に考えようとしたが、競り上がる呼吸で頭がくらくらした。
しばらくしてザカリーの唇がゆっくりと落ちていく。
しかし、完全に落ちたわけではない。
ザカリーはビアンカの下唇に自分の下唇をつけたまま、鼻先が届くほど近い距離で深く息を吸った。
彼の目つきが不明な感情で揺れている。
そうするうちにザカリーの唇が徐々にビアンカから落ちる間、彼の目つきに掠れた感情は跡形もなく姿を消した。
彼らのキスが終わると、今まで息を殺したまま若い伯爵夫婦を見守っていた大衆の歓声が競技場に響き渡る。
トーナメントで優勝した戦争の英雄伯爵とその妻。
まるで世紀のロマンスのように見えたのだろう。
大部分の人が好奇心と軽い興味程度を持って眺める渦中に、彼ら夫婦の事情を知っていたロベルは呆然と口を開けていた。
ソヴールは、よくやったと言うように満面な笑みを浮かべている。
そして、ジャコブの顔は槍で粉々になった盾のように歪んだ。
彼は血生臭い目で彼らを睨みつけていたが、ビアンカとザカリーはそのようなことを気にする余裕がなかった。
耳が詰まるほどの歓呼の中で、ビアンカはしばらくの間呆然となる。
その後、彼女は赤くなった顔で彼の胸元を押し、小さな声で囁いた。
「じ、冗談だったのに・・・!人がいるところで、こんな・・・!」
「冗談だったのですか?」
ザカリーは目をパチパチと開けて問い返す。
全く分からなかったような姿が、無邪気に見えた。
少年のような目つきをしたこの男が、少年とは到底考えられないほど執拗で濃密なキスをしたと信じることができない。
ビアンカは顔を赤らめたまま下唇に触れる。
さっき華やかに微笑んだのが嘘のように、ザカリーは再び固い表情に戻った。
ビアンカは手を擦りながら熱い顔を冷やしている。
その間、ザカリーはじっくり考えているかのように沈黙していた。
その沈黙は長続きしない。
すぐに決定を下した彼は決然と口を開く。
「あの時に言ったことは、まだ有効でしょうか?」
「ど、どういう意味ですか?」
「私の後継者がほしいと言った言葉です」
「もちろんですけど・・・」
突然の質問に、ビアンカは渋々答える。
キスするだけで彼女の頭は飽和状態だった。
そんな中、有効?後継者?
ビアンカはぼんやりとザカリーを見つめる。
ザカリーもビアンカをじっと見つめ、彼女に向かって身を預け、耳元に小さな声で囁いた。
「今夜、あなたの部屋を訪ねます」
「え?」
依然として訳の分からない言葉にビアンカが反問する。
ザカリーは返事をせずに微かな笑みだけを残して、彼女から離れた。
馬の上でバランスを取った彼が手綱を引いて少し拍車をかけると、ザカリーの黒馬はビアンカから遠ざかっていく。
ビアンカは一人残された。
しかし、まだ彼女の鼻先には革と鉄の匂いが、唇にはザカリーの温もりが残っている。
ビアンカはぼんやりとザカリーの後ろ姿を見て、彼が渡した黄金のバラを思わず唇に近づけた。
冷たい黄金の感触が彼女の熱い唇を冷やしていく。
けれど、激しく燃え上がる心を冷やすことはできなかった。




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