悪女なのにママになりました【１４７話】ネタバレ

衝撃的な事実にしばらく言葉を失い、ぼんやりと立ち、そっと口を開いた。

「私たち二人はただ、神の将棋の駒にすぎなかったのですか？」

「あなたたちの魂は互いに対立せざるを得ない宿命で結ばれています。善と悪が絶えず戦わなければならないこの世界の運命は、すなわちあなたたちの運命に他なりません。創造主と彼の影が、あなたたちをこの戦いの代理者に選んだのですから」

私がセアに向かってゆっくりと近づくと、フェリステラの声が聞こえてくる。

「この戦いは人間の原罪から始まったもの・・・。人間が「感情」を悟りながら、人間は互いを憎み合い、害を及ぼし始め、その姿に失望した創造主は「憎悪」を得たのです。その憎悪から影の神が生まれました」

「では、この全てが必然だということですか？」

「全てはずっと前から予定されていました。あなたを正しい道に導くために聖霊が降りてきましたが、あなたはその方が生まれる前に悪を選択してしまいました」

「私はそれが自分のせいだとは思いません。そして、セアのせいでもないですよね？」

「すべての悪はあなた方、人間が原罪を犯してから生まれたことを肝に銘じてください」

「生きていつかは死に至る存在が感情を持つのは、当然の摂理ではないのですか？生存するために恐怖を感じなければなりませんから。原因があるとすれば、人間を想像した神にあるのでしょう」

「なぜあなたのような者を神様が選んだのか理解できません」

「私も理解できませんね。私はラティーを愛していますが、神の意思を奉ずるわけではありませんから」

「愛・・・」

フェリステラが沈黙した。

もう話す気がなさそうなので、私はセアの隣の席に行って慎重に座る。

そしてセアにそっと話しかけた。

「私たち二人の間に何が起こったのか、全部思い出したわ」

「・・・」

セアは依然として膝を抱えながらうつむいている。

私の話には何の返事もなかった。

「さっきまではあなたが死ぬほど憎かったのに、急にすべてが虚しく感じたわ。私は今まで何をしていたのだろう？私たちに起こった全てのことが私たちの自由意志ではなく、神の意思によるものなのだから・・・」

「・・・」

「あなたも、私も完全に遊ばれているわ」

「・・・」

「しかし、そうだとしても、私が完全にあなたを許したわけではない。とにかくあなたは私をひどく苦しめたし、「ルール・エクレイ」で私の人生も台無しにした。ラティーが時間を戻さなかったら、私も、この世も終わってしまっていたでしょう」

「・・・」

「ねえ聞いているの？答えたくなかったら手でも振って」

するとセアは手を振る代わりに少し体をくねらせた。

私は心の中で舌打ちしながら話を続ける。

「実は私は知っていたのかもしれない。あなたが見た目とは違って弱かったから、他人を踏み躙り自分を立てることしかできない弱虫だってことを」

「・・・」

「そんなあなたを理解する。そしてあなたに言ったことを後悔する。あの時の私の過ちは確かに悔やんでいるわ」

「・・・」

「ごめんね」

自分で言っておいても違和感がある言葉だったが、この言葉は本心だ。

「今は分かる気がするけど、あの時は知らなかった。人は誰でも分別のない時があるということを、誰でも他人を傷つけることができるということを」

「・・・」

「あなたが私を傷つけたからといって、私も同じようにしてはいけなかったのよ」

「・・・」

私たちは他人を傷つけて生きていく。

世の中の誰も無罪であることはできない。

感情が生む原罪は、私たち全員のものなのだから。

「今まで私たちは憎しみに包まれ、お互いをこの世から消し去るために絶えずもがいてきたわ。そのように怪物になっていくという事実を知らないまま」

「・・・」

「私はもうこの悪循環を止めたい。このように燃やしても残るのは灰だけという事実に気づいたから」

「・・・」

「だから完全ではなくても、あなたを許したい。だから、あなたも私を許してほしい」

その時になって、ようやくセアが顔を上げた。

彼女の顔は涙まみれだった。

セアが苦しそうな声で言った。

「私はもう疲れたわ」

「私もよ」

「もうやめたい。誰かが私を救ってくれたらいいのに。でも、私は・・・」

その時、セアは何かを感知したかのようにビクッとして言葉を止める。

後ろを振り返ると、私たちの背後に長方形の扉が現れ、その向こうに不吉な気運が漂っていた。

扉越しの存在には慣れていた。

その名前を低く呼ぶと、底のない暗黒の中で大きな赤い瞳がパッと開いた。

「まだ・・・、セアの精神では侵入できないのね」

セアの肉体は影の神に食われたが、幸い魂は完全なようだ。

「まだ終わっていないわ」

私はセアの方を振り返りながら言った。

「方法があるはずよ。だから少しだけ耐えて」

セアの姿がだんだんぼやけていく。

私はすぐに現実へと目覚めるだろうと直感した。

やがてセアの心象世界が目の前から消える瞬間、セアが小さな声で私に囁く。

「ごめんね」